国際貢献と留学生
〜西北大学の事件から〜



 先日、中国陝西省西安市にある西北大学の文化祭で、日本人留学生の行った破廉恥な踊りに対し、 怒った中国の学生が抗議デモを行い、寮を取り巻くという事件が起こった。

 秋は日本でも大学祭が花盛りだ。あちこちにバンドやお笑い芸人が呼ばれ、多くの学生が集まる。中にはきわどい出し物もあるという。 そんな日本の「文化」に慣れてしまっていた留学生にとっては、「気楽な気持ち」だったのかも知れない。

 プロ野球のチームが優勝したからといって裸で川に飛び込む若者、それを煽るかのごとく取材するマスコミ。 こんな光景に慣れっこになっている学生が、中国の文化や慣習を学ぶこともなく、 ただ「会話」習得のために留学し、しでかした事件がこれだったのだろう。

 しかし事は「すみません」ではすまないほど拡大し、けが人まで出した。

 実は私の教え子が西北大学に留学し、この寮に住んでいたのである。 彼女は、研究室で行った陝西省商州市の東龍山漢墓の発掘調査に参加し、その経験を活かして卒業論文も中国漢墓の壁画についてまとめた。 留学に当たって論文を中国語に翻訳し、西北大学考古学研究室の先生に提出し、高い評価を得た。

 そんなまじめな彼女も事件を起こした学生と共に学外のホテルに隔離され、不安な1週間を過ごした。 襲撃の恐怖と戦いながら、今後のことをどうすべきか涙ながらに訴える学生に対して、私がどんな言葉をかけてやるべきか随分悩んだ。

 しかし、彼女自らが出した結論は「このまま帰国すると二度と中国へは行きたくなくなるだろう。中国に対しても悪いイメージしか残らなくなる。 それでは自分がやってきた研究の意味がなくなる。だからこのまま残ります。」という立派なものだった。 本当の国際交流とはこうした学生こそが担ってくれるものだと思う。

 先頃、日本政府は、日本へ来ている留学生の数が10万人の目標を超えたと発表した。 「こんなにたくさんの留学生を受け入れているんですよ!」と誇らしげに会見する役人の姿が目に浮かぶ。 しかし、日本へ受け入れる学生も、日本から送り出す学生も、数が問題なのではない。 今大学に求められているのは本当に意欲のある、国際交流を果たせる学生を育てることなのではなかろうか。

(2003.11.16 伊勢新聞掲載)


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