歴史のターニングポイント
〜時代が動くとき〜



 今年も考古学の現場から様々な発見が報告された。最も大きな衝撃を与えたのは弥生時代の開始期をめぐる炭素14年代の研究成果であろう。 弥生時代の開始が500年も遡るという発表に、考古学界は蜂の巣を突付いたような騒ぎになっている。 藤原京の朱雀大路が消えたというのも私の研究には有り難い発見であった。

 つい先日も、大坂城三の丸の堀の中から刀傷を受けた頭蓋骨が見つかったとの報道があった。 頭蓋骨は冬の陣における戦死者の遺体だろうという。冬の陣は時代を大きく変えた転換点であった。 そんな戦いの中で死んでいった兵士の無念さを思うと心が痛む。

 三重大学では、大学構内から鬼が塩屋遺跡が発見され、弥生時代から古墳時代にかけての海民たちの生活ぶりを示す資料が出土した。 遺跡がないとされてきた大学での文化財保護の転機になる「事件」であった。

 どんな学問領域でも定説を覆す研究をするのは並大抵のことではない。 そんな中で時代の転換点を示す研究成果を出せたときほど嬉しいことはない。

 今まさに考古学研究室では卒業論文や修士論文のために様々な変化を求めて悪戦苦闘中である。 今年も、奈良時代研究では最もポピュラーな聖武天皇や律令祭祀に関する学生ならではの大胆な挑戦がなされている。 小地域における限られた時期の画期なら学生でも見つけることができるが、果たしてきちんと証明できるか、 一月末の締め切りまで50日を切ってしまった。どんな成果が出てくるのか、楽しみでもあり、不安でもある。

 20世紀から21世紀へ、ミレニアムに酔った2001年から3年経った今年は、再び戦争という重い課題を背負わされてスタートをきった。 その年も暮れようとしているとき、自衛隊のイラク派遣が決定された。その衝撃を打ち消すかのような「発見」が12月14日のテレビを占拠した。 フセイン大統領の身柄拘束である。日本にとっても、イラクにとっても二〇〇三年がターニングポイントの年になることは間違いなかろう。

 はたして来年はどんな年になるのであろうか。春二月、三重大学考古学研究室では、聖武天皇の伊勢行幸地を求めて発掘調査を準備している。 これまであまり重要視されてこなかった行幸だが、私は、二ヶ月に及ぶこの旅行こそ、日本を仏教国家へと決定付けたものだと考えている。 四箇所に及んだ伊勢行幸時の頓宮跡がどんな姿で現れるのか楽しみである。

(2003.12.21 伊勢新聞掲載)


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